【登場人物】
巽 スラアク使いの新米ハンター
東雲 弓メインのベテランハンター
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「今日も旦ニャ様はステキですニャ」

恭しくお辞儀するルームサービスネコに頷いて応え、僕は敬愛してやまないシノさんをココット村から誘い出し旧砂漠へ向かった。

僕の下心なんてお見通しなシノさんは、熱帯イチゴを採取しながら不機嫌そうにこちらを睨みつける。

「で?俺に採集させておきながら、お前は手ぶらで村に帰るつもりか?」

「シノさんは真面目だなぁ。僕は別に、熱帯イチゴを採集する為にシノさんを誘ったわけじゃないんですよ?」

「クエスト以外の理由で俺を呼び出すな」

シノさんは特定の相棒を持たない主義らしいのだが、ソロ専というわけでもないので僕はせっせとシノさんをクエストに誘っていた。本気で嫌なら断ればいいだけなんだから、なんだかんだシノさんは僕とのクエストを楽しんでいるに違いない。

呆れるシノさんの横顔も麗しくてずっと見ていたいけれど、ひとまず機嫌を直して貰うべく背中から優しく抱きしめてあげた。

「ねえシノさん、熱帯イチゴなんかより、もっと熱いモノが欲しくはありませんか?」

「お前はどこの変態オヤジだ、俺より一回りも年下のくせに」

「一回りも年下の若造を誘惑するシノさんが悪いんでしょう?」

「俺に責任転嫁するつもりか」

深い溜め息をついたシノさんは、僕を背中に張りつかせたまま静かに腰の剥ぎ取りナイフを抜き放つ。

「暑苦しいからとっとと離れろクソ野郎、お前の骨と皮を剥ぎ取るぞ」

「うわあ、相変わらずシノさんは容赦ないなぁ」

これ以上くっついていると本当に解体されかねないので、大人しくシノさんの体から離れた。

「どうせ暇なんだろ?だったらサブターゲットの魚竜のキモでも採取してこい」

「えー、ガレオスって面倒臭いから嫌いなんですよねー」

「四の五の言わず行ってこい」

「じゃあサブターゲットクリアしたら、ほっぺにチューして下さいよ」

僕の提案にシノさんは舌打ちし、頭を掻いて「わかったわかった」と返答する。

「お前のしつこさには敵わん」

「やった、シノさんにチューして貰える!」

そんなわけで僕は、喜び勇んでクーラードリンク必須な砂漠エリアへ突撃した。



「それで?何故お前はベースキャンプで寝てるんだ?」

ベースキャンプのベッドでふて寝する僕に、熱帯イチゴを納品しに来たシノさんが呆れた声で訊いてくる。

「これには深いわけがありまして」

僕は自分の身に起こった出来事をシノさんに説明した。

「魚竜のキモを集める為にガレオスを追いかけ回していたんですけど、やたら黒っぽいヒレが見えるなーって思ってスラアクでつついたら、なんと!砂中からドスガレオスが飛び出してきたんです!」

ベッドから身を起こし両手を使って衝撃を表現するも、シノさんは呆れ顔でじっと僕を見据え表情一つ変えない。

「で?俺が戻ってくるまでずっとキャンプでサボってたのか?」

「サボってたわけではないんです、ここで待っていたらシノさんが迎えに来てくれるだろうなーと思ったので」

ニコリと笑ってシノさんの方へ手を伸ばし、この手をとってくれるよう目顔で合図する。シノさんは深い溜め息をつきつつも僕の手をとってくれたので、そのまま勢い良くベッドに押し倒した。

「いてっ。おい巽、調子に乗るなよ」

「調子に乗ってはいませんよ、僕はただシノさんの上に乗りたいだけです」

「この万年発情期野郎が、サカッてる余裕があるならHR上げる努力をしろ」

四肢を押さえつけられてもシノさんはまったく動揺せず、半眼のままじっと僕を見据える。冷めたその眼差しが僕の興奮を一層高め、怒られるのを覚悟でおそるおそる唇を近づけた。

「シノさん……」

カサカサに荒れた厚い唇は色気の欠片もなく、狩猟生活一筋でやって来たシノさんの真面目さを表している。日に焼けた肌もモンスターを射抜く冴えた眼光も全てが尊いものに思え、僕は神に祈るような気持ちでその唇を奪った。

シノさんは微動だにしない。微かに唇を離し至近距離から見つめると、数秒前と変わらずシノさんは半眼で僕を見ていた。

「あの、シノさん……抵抗しないんだったら、もっと調子に乗りますけど」

「元気が有り余っているのなら、ドスガレオスにリベンジしてこいよ」

「それはまあ……別の話という事で」

情けない顔で苦笑するとシノさんは気だるげに嘆息し、不意に僕の頬を両手で挟んで噛みつくように乱暴なキスをしてくる。驚く僕の唇に吸いついたまま態勢を徐々に逆転させ、あっという間にシノさんが馬乗りになってこちらを見下ろす格好となった。

「サブターゲットとドスガレオスを片付けたら、お前の望みを叶えてやる」

「シノさ━━むぐぐ」

僕の言葉は唇で塞がれ、信じられないほど淫らな口づけが身体の芯を熱くさせる。こすれ合う下腹部はシノさんの存在を主張し、確かな欲情の形を僕に知らせた。

シノさんも興奮している……その事実が僕を滾らせる。これはもう、頑張ってドスガレオスにリベンジするしかなかった。

キャンプを飛び出した僕は再び砂漠エリアへ向かい、悠々と砂中を泳ぐ黒い背ビレを探す。ドスガレオスはすぐに見つかり、僕は音爆弾を右手に構え黒い背ビレめがけて投げつけた。



砂漠で倒れる僕の上に曲射が降り注ぐ。

「痛い痛い痛いですっ」

ドスガレオスの麻痺攻撃を喰らい痙攣していた僕は、シノさんの弓によって手荒に麻痺を解除して貰った。

「念の為様子を見に来てみれば、案の定だったな」

「出来ればシノさんのキスで目覚めさせて欲しかったです」

「お前は永遠に砂とキスしてろ」

冷たく言い放ち、シノさんは近くを泳ぐガレオスを狩って魚竜のキモを剥ぎ取る。

「お前が寝てる間にドスガレオスは狩っておいた、ついでに魚竜のキモも集め終わったから村に帰るぞ」

「えっ、シノさん一人で全部片付けちゃったんですかっ?」

本気で驚く僕にシノさんは呆れ顔で肩を竦めた。

「このくらい朝飯前だ」

「いえ、そうではなく。シノさんが片付けてしまったら、僕の望みを叶えてくれるっていう約束が反故になってしまうんじゃないかと」

僕の言葉にシノさんは頭を抱え低く唸る。

「お前の頭の中はエロしかないのか?」

「エロではなく愛です!」

断言する僕にシノさんは深い溜め息をつき、問答無用で睾丸を鷲掴みしてきた。

「ひゃ!?」

「だったらこのタマは必要ないよな?」

「い、いえ、それは、シノさんを悦ばせる大切な……」

「俺を悦ばせたいのなら、もっと強くなれ。少なくともHR一桁の雑魚に用はない。わかったな?」

シノさんの目は完全に本気である。これ以上反論したら本当に睾丸を握り潰されかねないので、大人しくシノさんの言葉に頷いた。



「狩りの後の温泉は堪らんな」

狩りの後必ずシノさんは僕が住むユクモ村に立ち寄る。目当ては勿論ユクモ温泉だ。

「それじゃあ僕と同棲しませんか?毎日温泉入り放題ですよ」

さり気なくシノさんの裸体に手を伸ばすが、ピシャリと叩かれ拒絶される。

「断る。お前と同棲したら身が保たんからな」

「えー、僕は毎日シノさんと触れ合いたいのになぁ」

「お前はプーギーと戯れていろ」

この後僕達はのぼせるまで仲良く温泉を楽しんだ。