【登場人物】
甲太郎 純情ハンター
伊織 今回は操虫棍ハンター
甲太郎 純情ハンター
伊織 今回は操虫棍ハンター
朝目覚めると隣に伊織さんがいて、寝起きのぼくを見つめニッコリ微笑んだ。
「おはようございます、甲ちゃん」
「ほへあ!?」
薄布一枚纏っただけの伊織さんの姿にぼくは間抜けな声をあげ、慌ててベッドから飛び起きる。伊織さんはニコニコ菩薩のような笑みを湛えたまま、パンツ一丁のぼくの太腿に白く長い指を這わせた。
「安心なさいな、甲ちゃん。何もやましい事はしてませんからね」
「その通りですニャ、旦ニャ様。相棒様は夜中こちらに来て、すぐにバタンキューしちゃったのですニャ」
ルームサービスネコの証言に伊織さんが頷き、動揺するぼくの胸板に人差し指を当てる。
「最近古代林で斬竜の目撃情報が増えているので、調査チームに同行して護衛の任に就いていたんですよ」
「はあ」
斬竜なんて、ぼくにはまったく縁のないモンスターだ。相棒とはいえ伊織さんは高ランクのハンターである、ぼくの知らない所で知らないハンターとクエストに出掛けてもなんら不思議はなかった。
無意識に不満を顔に出してしまったのか、伊織さんが悪戯っぽい笑みを口端に刻んでぼくの唇をツンツンつつく。
「ふふ、もしかして甲ちゃん、仲間外れがご不満なんですか?」
「そ、そういうわけでは……」
「心配せずとも私の相棒は甲ちゃんなんですから、そんな顔をする必要はありませんよ」
当たり前のように伊織さんがぼくの頬にチュッとキスをし、ルームサービスネコに頼んでクエスト依頼書を差し出してくる。
「今日はマッカォ討伐に行きましょうか」
そんなわけで伊織さん主導のもと、マッカォ討伐の為古代林へ向かった。
大剣を振り回し順調にマッカォを討伐していると、背後から甲高いモンスターの咆哮が聞こえ瞬時に納刀し態勢を整える。放置されたテントの向こう側、真っ赤な顔のドスマッカォが敵意剥き出しで飛び跳ねていた。
伊織さんは別のエリアでマッカォを討伐している為、この場を切り抜けるには自分の力だけでどうにかせねばならない。ぼくはいつでも抜刀出来るよう右手を構え、ドスマッカォの尻尾の動きに注意した。
ドスマッカォが甲高い声を発し、素早くこちらへ跳んでくる。ギリギリのタイミングで真横へ逃げたぼくは、ドスマッカォの背後に回って大剣を振り下ろした。
「うおりゃああぁぁー!」
ぼくは伊織さんに相応しい相棒になるんだ、その為にはもっともっと強くならねばならない。
攻撃を喰らったドスマッカォが振り返り、その場で跳ねながら方向を修正し再びぼくの方へ跳んできた。今度はうまく避けきれずドスマッカォの突進を喰らってしまい、ぼくは地面に尻餅ついてしまう。
「いたっ」
間抜けな態勢のぼくを見下ろし、ドスマッカォが迫ってきた。やられる━━そう覚悟した瞬間、どこからともなく猟虫が飛んできてドスマッカォの顔面を破壊する。
「大丈夫ですか、甲ちゃん」
操虫棍を構えた伊織さんが現れ、優美な仕草で猟虫を呼び戻した。
「伊織さん」
「無理は禁物ですよ、敵わないと思ったら逃げるのもハンターの仕事ですからね」
逃げるのもハンターの仕事……伊織さんの言葉にぼくは、熟練ハンターだった叔父さんの姿を思い出す。ぼくがハンターを志したキッカケの人で、永遠に手の届かない人。
「生きて帰るのが、ハンターの仕事……ですよね」
「その通りですよ、甲ちゃん」
伊織さんがニッコリ微笑み、ドスマッカォめがけて一気に操虫棍で跳躍した。敵わないなら逃げるのも仕事だ、けれど伊織さんがいる今ならぼくだって十分戦える。
勇敢な叔父さんの姿を伊織さんに重ね合わせ、ぼくは雄叫びをあげてドスマッカォに突撃した。
ぼくの叔父さんはもうこの世にはいない。とある古龍を追って僻地に向かい、そのまま帰らぬ人となったのだ。
「ドスマッカォ討伐おめでとう、甲ちゃん」
傷だらけでベースキャンプのベッドで休むぼくに、伊織さんが回復薬グレートをプレゼントしてくれる。
「伊織さんがサポートしてくれたおかげです」
「謙遜しなくていいんですよ。甲ちゃんがすくすく育ってくれて、私はとっても嬉しいんですからね」
満面の笑みを浮かべた伊織さんは、回復薬グレートを飲もうとするぼくの手を止め淫靡な光を瞳に宿した。
「口移しで飲ませてあげましょうか?」
「えっ?」
「嫌なら別にいいんですけど」
「お……お願いします」
欲望に勝てずお願いすると、伊織さんはぼくの手から回復薬グレートを受け取り口に含む。赤い唇がぼくの唇にそっと触れ、回復薬グレートが伊織さんの口から直接与えられた。
「ん……んっ……ぷはあ」
回復薬グレートを飲み干すと伊織さんがぼくをベッドに押し倒し、更に淫靡な口づけを施す。両腕で頭を抱え込まれ深く舌を差し込まれ、上顎から舌の裏まで激しく口腔を蹂躙された。
ぼくには余りにも刺激が強過ぎて、じわじわ股間が熱く硬くなりガマン汁を滲ませてしまう。注がれた唾液を嚥下すると伊織さんが唇を離し、慈愛に満ちた眼差しでぼくを見下ろした。
「甲ちゃんの事は、昔から知っていたんですよ」
「えっ?」
突然の告白に驚いていると、伊織さんがぼくの胴装備を脱がせてインナー越しに胸板を愛撫し始める。
「私をハンターの世界に引き込んだ人こそが、甲ちゃんの叔父さんだったんです」
「叔父さんが……?」
「ええ。だけど彼は家族を置いて単身祖龍のもとへ向かった」
「はい、それは父さんから聞きました。戦地には遺体も遺品も残ってなかったとか」
その言葉に伊織さんは切ない微笑を浮かべ、ぼくの胸板にそっと身体を預けた。
「ハンターは生きて帰ってこそ……そう教えてくれた人が、帰らぬ人となるなんて」
ぼくはぼくの中で今までずっと疑問だったものの答えに辿り着いてしまう。伊織さんがぼくを相棒に選んだ理由。
「……伊織さんは、叔父さんの事が好きだったんですね」
伊織さんからの答えはない、それでもその沈黙が全てを物語っていた。
それは恋愛感情ではなくもっと純粋な憧憬の念だったのかもしれない、だけどぼくはこの腕で伊織さんを抱きしめる事を躊躇してしまう。だってぼくは、伊織さんに恋愛感情としての好意を抱いているからだ。
「ぼくは絶対死にません」
ぼくの宣言に伊織さんはクスリと笑う。
「ふふ、私を慰めてくれるんですか?」
「慰めなんかじゃありません、ぼくは絶対に死なない事を今ここで宣誓します」
手持ち無沙汰の両手を伊織さんの肩に置き、空を仰いで腹の底から叫んだ。
「ぼくは絶対伊織さんを残して勝手に死んだりしません!」
「……ふふふ、甲ちゃんは面白い子ですねぇ」
伊織さんがゆっくり起き上がり、ぼくの頭を優しく撫でる。
「私より先に死んだら、承知しませんよ」
「はい、任せて下さい!」
鼻息荒く告げるぼくに、珍しく伊織さんがケラケラ笑った。
「おかえりなさいませですニャ、旦ニャ様」
ペコリとお辞儀したルームサービスネコが、クエストから帰還したぼくの顔を見上げ小首を傾げる。
「旦ニャ様、なにかいいコトがありましたかニャ?」
「え?うん、えへへ」
「それはよかったですニャ」
好きな人がいるというのは、それだけで人生に張り合いが出るものだ。好きな人が共に歩んでくれるなら尚更。幸せを噛みしめニヤニヤするぼくを見つめ、ルームサービスネコも嬉しそうにニャーと鳴いた。
「おはようございます、甲ちゃん」
「ほへあ!?」
薄布一枚纏っただけの伊織さんの姿にぼくは間抜けな声をあげ、慌ててベッドから飛び起きる。伊織さんはニコニコ菩薩のような笑みを湛えたまま、パンツ一丁のぼくの太腿に白く長い指を這わせた。
「安心なさいな、甲ちゃん。何もやましい事はしてませんからね」
「その通りですニャ、旦ニャ様。相棒様は夜中こちらに来て、すぐにバタンキューしちゃったのですニャ」
ルームサービスネコの証言に伊織さんが頷き、動揺するぼくの胸板に人差し指を当てる。
「最近古代林で斬竜の目撃情報が増えているので、調査チームに同行して護衛の任に就いていたんですよ」
「はあ」
斬竜なんて、ぼくにはまったく縁のないモンスターだ。相棒とはいえ伊織さんは高ランクのハンターである、ぼくの知らない所で知らないハンターとクエストに出掛けてもなんら不思議はなかった。
無意識に不満を顔に出してしまったのか、伊織さんが悪戯っぽい笑みを口端に刻んでぼくの唇をツンツンつつく。
「ふふ、もしかして甲ちゃん、仲間外れがご不満なんですか?」
「そ、そういうわけでは……」
「心配せずとも私の相棒は甲ちゃんなんですから、そんな顔をする必要はありませんよ」
当たり前のように伊織さんがぼくの頬にチュッとキスをし、ルームサービスネコに頼んでクエスト依頼書を差し出してくる。
「今日はマッカォ討伐に行きましょうか」
そんなわけで伊織さん主導のもと、マッカォ討伐の為古代林へ向かった。
大剣を振り回し順調にマッカォを討伐していると、背後から甲高いモンスターの咆哮が聞こえ瞬時に納刀し態勢を整える。放置されたテントの向こう側、真っ赤な顔のドスマッカォが敵意剥き出しで飛び跳ねていた。
伊織さんは別のエリアでマッカォを討伐している為、この場を切り抜けるには自分の力だけでどうにかせねばならない。ぼくはいつでも抜刀出来るよう右手を構え、ドスマッカォの尻尾の動きに注意した。
ドスマッカォが甲高い声を発し、素早くこちらへ跳んでくる。ギリギリのタイミングで真横へ逃げたぼくは、ドスマッカォの背後に回って大剣を振り下ろした。
「うおりゃああぁぁー!」
ぼくは伊織さんに相応しい相棒になるんだ、その為にはもっともっと強くならねばならない。
攻撃を喰らったドスマッカォが振り返り、その場で跳ねながら方向を修正し再びぼくの方へ跳んできた。今度はうまく避けきれずドスマッカォの突進を喰らってしまい、ぼくは地面に尻餅ついてしまう。
「いたっ」
間抜けな態勢のぼくを見下ろし、ドスマッカォが迫ってきた。やられる━━そう覚悟した瞬間、どこからともなく猟虫が飛んできてドスマッカォの顔面を破壊する。
「大丈夫ですか、甲ちゃん」
操虫棍を構えた伊織さんが現れ、優美な仕草で猟虫を呼び戻した。
「伊織さん」
「無理は禁物ですよ、敵わないと思ったら逃げるのもハンターの仕事ですからね」
逃げるのもハンターの仕事……伊織さんの言葉にぼくは、熟練ハンターだった叔父さんの姿を思い出す。ぼくがハンターを志したキッカケの人で、永遠に手の届かない人。
「生きて帰るのが、ハンターの仕事……ですよね」
「その通りですよ、甲ちゃん」
伊織さんがニッコリ微笑み、ドスマッカォめがけて一気に操虫棍で跳躍した。敵わないなら逃げるのも仕事だ、けれど伊織さんがいる今ならぼくだって十分戦える。
勇敢な叔父さんの姿を伊織さんに重ね合わせ、ぼくは雄叫びをあげてドスマッカォに突撃した。
ぼくの叔父さんはもうこの世にはいない。とある古龍を追って僻地に向かい、そのまま帰らぬ人となったのだ。
「ドスマッカォ討伐おめでとう、甲ちゃん」
傷だらけでベースキャンプのベッドで休むぼくに、伊織さんが回復薬グレートをプレゼントしてくれる。
「伊織さんがサポートしてくれたおかげです」
「謙遜しなくていいんですよ。甲ちゃんがすくすく育ってくれて、私はとっても嬉しいんですからね」
満面の笑みを浮かべた伊織さんは、回復薬グレートを飲もうとするぼくの手を止め淫靡な光を瞳に宿した。
「口移しで飲ませてあげましょうか?」
「えっ?」
「嫌なら別にいいんですけど」
「お……お願いします」
欲望に勝てずお願いすると、伊織さんはぼくの手から回復薬グレートを受け取り口に含む。赤い唇がぼくの唇にそっと触れ、回復薬グレートが伊織さんの口から直接与えられた。
「ん……んっ……ぷはあ」
回復薬グレートを飲み干すと伊織さんがぼくをベッドに押し倒し、更に淫靡な口づけを施す。両腕で頭を抱え込まれ深く舌を差し込まれ、上顎から舌の裏まで激しく口腔を蹂躙された。
ぼくには余りにも刺激が強過ぎて、じわじわ股間が熱く硬くなりガマン汁を滲ませてしまう。注がれた唾液を嚥下すると伊織さんが唇を離し、慈愛に満ちた眼差しでぼくを見下ろした。
「甲ちゃんの事は、昔から知っていたんですよ」
「えっ?」
突然の告白に驚いていると、伊織さんがぼくの胴装備を脱がせてインナー越しに胸板を愛撫し始める。
「私をハンターの世界に引き込んだ人こそが、甲ちゃんの叔父さんだったんです」
「叔父さんが……?」
「ええ。だけど彼は家族を置いて単身祖龍のもとへ向かった」
「はい、それは父さんから聞きました。戦地には遺体も遺品も残ってなかったとか」
その言葉に伊織さんは切ない微笑を浮かべ、ぼくの胸板にそっと身体を預けた。
「ハンターは生きて帰ってこそ……そう教えてくれた人が、帰らぬ人となるなんて」
ぼくはぼくの中で今までずっと疑問だったものの答えに辿り着いてしまう。伊織さんがぼくを相棒に選んだ理由。
「……伊織さんは、叔父さんの事が好きだったんですね」
伊織さんからの答えはない、それでもその沈黙が全てを物語っていた。
それは恋愛感情ではなくもっと純粋な憧憬の念だったのかもしれない、だけどぼくはこの腕で伊織さんを抱きしめる事を躊躇してしまう。だってぼくは、伊織さんに恋愛感情としての好意を抱いているからだ。
「ぼくは絶対死にません」
ぼくの宣言に伊織さんはクスリと笑う。
「ふふ、私を慰めてくれるんですか?」
「慰めなんかじゃありません、ぼくは絶対に死なない事を今ここで宣誓します」
手持ち無沙汰の両手を伊織さんの肩に置き、空を仰いで腹の底から叫んだ。
「ぼくは絶対伊織さんを残して勝手に死んだりしません!」
「……ふふふ、甲ちゃんは面白い子ですねぇ」
伊織さんがゆっくり起き上がり、ぼくの頭を優しく撫でる。
「私より先に死んだら、承知しませんよ」
「はい、任せて下さい!」
鼻息荒く告げるぼくに、珍しく伊織さんがケラケラ笑った。
「おかえりなさいませですニャ、旦ニャ様」
ペコリとお辞儀したルームサービスネコが、クエストから帰還したぼくの顔を見上げ小首を傾げる。
「旦ニャ様、なにかいいコトがありましたかニャ?」
「え?うん、えへへ」
「それはよかったですニャ」
好きな人がいるというのは、それだけで人生に張り合いが出るものだ。好きな人が共に歩んでくれるなら尚更。幸せを噛みしめニヤニヤするぼくを見つめ、ルームサービスネコも嬉しそうにニャーと鳴いた。
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